「食トレ」の弊害

取材の後半、川村さんの大学時代の後輩で、プロに進んだ投手の話題になった。その人は高校時代は控えで公式戦登板も少なかったようである。ところが筑波大学で大幅に成長を遂げ、三振を奪取しまくってドラフト1位でプロに進んだ。

「大学に入りたての頃に見たときは、ボールは130キロそこそこでした」

昨今130キロは高校生でも珍しくないスピードだろう。しかし、翌年には140キロを超すボールを投げていたらしい。

指導者としてこんなふうに川村さんは話す。

「私たちの野球研究室では、ボールを速くする方法はいくらでも知っています。急激に上げることもできます。でもスピードが上がった2週間くらいあとで、その選手が『痛い』と言うんです。
メカニクス(体の動き)は向上したけれど、体の成長が追いついていないからケガするんですね。“伸びどころ”は、選手ごとに必ずあって、指導者が個々の選手の身体を見て、徐々に上げていくのが良いのです」

大学生でもそうなのだから、子どもならもっと気をつけないと。身体の成長に見合った段階的な指導が不可欠なのだろう。