>>44
残念ながら現在のABLはこのような「第1級」スタジアムを利用する段階にはない。野球人気を考えると、そのことは発足当初からわかっており、だからこそ、各球団の多くはこの「第1級」に続く「第2級」の施設を使用した。
 オーストラリアの各都市には「ショーグラウンド」と呼ばれる多目的競技場がある。これは古くから様々な催しものや乗馬なども含むスポーツが行われていたのだが、
ABL発足当初は、半数ほどのチームが、市街地の中心もしくはほど近いショーグラウンドや小規模のオーヴァルを間借りして使用していた。

しかし、現在、このようなスタジアムを間借りしている球団は、ABLにはない。
球団発足初年度とあって今季は、郊外の公園に臨時のスタンドを設営したニュージーランドの新球団を除く全ての球団は、野球専用施設を本拠としている。
ただし、これらは集客施設としてではなく、本来的にはトレーニング施設として建設されたもので、それゆえ、市の中心から離れたところにあるものが多い。
しかし、この国でマイノリティである野球ファンを相手にしている現状においては、施設を間借りする費用を考えると、国からの援助も受けているリーグの運営母体、ベースボール・オーストラリアの施設を利用した方が現実的なのであろう。

公共の交通機関ではアクセスしにくい球場

 今回、訪ねた4都市、ビクトリア州のメルボルン、ジーロング、南オーストラリア州のアデレード、西オーストラリア州のパースの球場はいずれも町中らはアクセスにしくい郊外に立地する野球専用の施設である。
このうち、メルボルンを除く3か所はABL公式戦の行われるメインスタジアムの他、数面のフィールドをもつ野球ソフトボールの総合施設である。そもそもが選手のための施設なので、多くの観客がナイターで訪れることなど想定していない。
ナイター後、公共の交通機関で帰ることはかなり難しい。最寄りの郊外電車の駅から徒歩十数分のメルボルン郊外アルトナの球場がかろうじてアクセスできるが、実際に野球観戦に郊外電車を利用していた人はほとんどいなかった。