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 昨季途中加入したN砲にシーズン中から海外武者修行を打診し、快諾を得た。今月
6日に単身渡米。その異国の地で待ち受けている地獄のメニューの一つが、砂地での
坂道ダッシュだった。アップの段階で頂上まで5本歩き、その後はジョグで中腹まで
あがると、残り約30メートルをダッシュやサイドステップで10本、歯を食いしば
りながら、最後は一気に駆け上がった。

 絵に描いたような“坂路調教”だ。競走馬は前線基地の滋賀・栗東や茨城・美浦のト
レーニングセンターにある急勾配の坂道を駆け上がることで、後肢を鍛え、スピード
と瞬発力をアップさせる。伊藤隼自身、オフのポイントとして「(今年)30歳にな
りますが、何もしないと落ちてくる」とハムストリングなど体の裏側の筋肉強化を掲
げていたが、海の向こうに絶好の舞台が用意されていたというわけだ。

 太ももをパンパンに鍛える前にも、たっぷりと汗をかいている。

 起床は午前5時。ジムの専属トレーナーの下、同6時前からリフト、サーキット系
を組み合わせた1時間のメニューを消化する。朝食後にはティー、トス打撃に加え、
ノックなど6時間のハードトレに及ぶ。「朝が早かったので、みっちりやっても、正
午ごろには終わっていました」。単身でホテル住まいのため、午後は洗濯や休養にあ
てる。広大な大地のエネルギーをすべて吸収するため、アリゾナ州ペイジ近郊にある
自然の鉄砲水により岩が削られ独特の形となったアンテロープ・キャニオンとホース
シューベンドにも足を運び「標高1000メートルでかなりの寒さでした」と高山ト
レにも挑んだ。