あの人は今  元大阪桐蔭高校ピッチャー 藤浪晋太郎さん(32歳) 2026年、ワールドシリーズ。 それをテレビで見つめる男がいた。 18歳で将来を嘱望され阪神タイガースへ入団した、藤浪晋太郎さんだ。
「あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想する藤浪さんはどこか寂しげだ。 「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。ワールドシリーズで、俺が完封して活躍する夢を」
藤浪さんは阪神タイガース在籍時に投手としては致命的なイップスにかかり、2018年オフ北海道日ハムファイターズにトレードで放出、その後4年間リハビリを続けたが 結局完治することはなく、ファイターズから戦力外通告を受けた。
今は地元大阪で串カツ専門店を営む傍ら、地元の少年野球のコーチを勤めている。 店の屋号の文字は元ファイターズ、中田翔選手の手によるものだ。
「いらっしゃい」。十三駅東口から歩いて3分。
「串カツ 藤浪」のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると白いタオルを 頭に巻いた藤浪晋太郎さんと妻、彩さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。暖簾の『藤浪』という文字は中田翔さんに書いて いただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった。 おかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」
藤浪さんは本当に嬉しそうに、僕たちに語ってくれた。 とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。 「串カツ好きは飛行機に乗って本場・大阪まで食べに出かける時代でしょ。
ボクが修業した難波の老舗『だるま』の串カツは二度づけ禁止のソースベースのタレが特徴だからただ材料を揚げただけのものだと信じ込んでる関東人にはモノ足りないようなんです。 それで怒られちゃったこともあるけどそれも修業のうち。我慢、我慢です」
かつてのライバルで現エンジェルス所属の大谷について尋ねると… 「知ってます?プロ3年目までは僕の方が(通算勝利数)上だったんですよ?」と、おどけ 「俺も阪神にさえ入って無ければって…歯がゆいですけど」
「今はもう現役に未練はありません。今度はこの、串カツで日本一になれるよう、 がんばるだけです!」
(写真)たこ焼きを手に持つ藤浪さん