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 二回一死二、三塁で迎えた最初の打席では、遊ゴロの間に三走が生還してプロ初打
点を挙げ、自らを援護した。中日とは今季松坂大輔と投げ合って2戦2敗だった。「
3度目の正直という言葉を信じて投げよう」と、左打者の内角へのカットボールも有
効に使って一回二死からは15連続アウト。自己最多の127球を投げ、7回5安打、
こちらもキャリアハイの9奪三振で2失点に抑え、トンネルを抜けた。

 須磨翔風高時代、甲子園出場経験のある相手との遠征試合で投げれば「大体、勝っ
ているイメージですね」と中尾修野球部監督(52)も振り返る能力があった。最善
の準備をする癖を同高時代に出会った一冊の著書から学び、さらに成長につなげた。

 「(ソフトバンクの)工藤監督の本で(内容は)目標設定のやり方です。でかい目
標のために何ができるか。例えば、来年これをやるから、じゃあ今はこれやろう、そ
のために今週はこれを、今週のためにこの日は、って」

 自分の頭で考え、どん欲に動き続けた。役立つ可能性があればとバレーのアタック
の瞬間、テニスのサーブの腕の動きをみるために他の部活へ足を運んだ。努力の積み
方は知っていた。この夜のプレッシャーにも「(ラストチャンスは)気にせず、自分
の納得いく投球がしたかった」と胸を張った。

 金本監督は「スライダーを左打者のインサイドに突っ込んだ。(リードした)梅野
と投げきった才木、2人をちゃんとほめてあげたいですね」と納得顔。19歳の力投
でナゴヤドームの連敗も5でストップ。借金を4として、3位巨人に1差接近だ。高
校野球の季節は過ぎ去ったが、夏はこれから。虎が野球熱を引き継いでいく。 (新里公章)