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 続く4番村上(ヤクルト)は内角155キロで遊飛に打ち取ったが、遊撃が落球。
一死二塁を背負う不運も、落ち着いて後続を断った。安田(ロッテ)を三ゴロに打ち
取ると、最後は岩見(楽天)のバットを高め151キロで空を切らせた。「最後は三
振が取れてよかったと思います」と笑顔。全21球中19球を占めた直球は、そのう
ち18球が150キロを超えていた。

 1メートル90の長身から、最速は158キロ。かねてから首脳陣からの期待は高
かった。しかし度重なるけがに泣かされ、ルーキーイヤーの2016年以来1軍から
遠ざかる日々。昨年12月には腰椎ヘルニアの手術も受けた。地道なリハビリを乗り
越え、3日の中日戦(甲子園)で待望の1軍マウンドに帰ってきた。

 腰の手術以降、湯船にゆっくりつかる習慣をつくった。そしてその時間で本をむさ
ぼり読んだ。はじめは野球関係ばかりだったが、「もっと他にも目を向けてみようか
な」。書店に足を運び、目についた面白そうな本を手に取った。五輪のメダリストの
自伝から、筋肉や骨の構造についてのものまで。英語を勉強しようと一念発起したこ
とも。あらゆる知識や考えを貪欲に吸収した。

 中でも心に残った1冊がある。『孫子の兵法』だ。「勝負師の考え方や、勝つため
の策とか。なるほど、と思いました。野球以外の本でも、野球に共通していることは
たくさんあるんだなって」。マウンド上での自分も、自然と変わっていった。全ての
ことが野球につながる感覚が、確かにある。1軍帯同を続ける今、毎日が勉強だ。