温めておいた懐刀、勝負どころでひもを解いた。平良が初めて先頭安打を許した5回。続く板山を2−2と追い込みアウトローに逃げるシンカーで見逃し三振に仕留めた。
この試合2球目。スライダーを軸に抑える中で意表を突いた。シンカーはもう1球だけ。梅野を三振に仕留め、さらに代打鳥谷を二ゴロに仕留めたのがそうだ。
「真っすぐとスライダーで内を突けた。シンカーに慣れてきたら踏み込まれてしまう。去年とは違う姿を見せられた」。初甲子園で躍動した。

 ホロ苦デビューの記憶をぬぐい去った。巨人時代の16年。デビュー戦の相手が阪神だった。3回まで好投するも、4回につかまり4番福留に先制2ラン。
この試合も4回に福留にソロアーチを打たれ「次は抑えられるように頑張ります」。それでも最少失点にとどめ2年前の借りは返した。

 FAの人的補償で加入した昨季、プロ初勝利を果たしたが4試合登板で1勝3敗。2勝目が遠かった。だからオフに筋力アップに着手。
一昨年まで自主トレで一緒だった巨人内海から“卒業”し沖縄で牙を研いだ。100キロが限界だったスクワットは、140キロまで増えたバーベルを何度も上げた。
ただ、あくまでも投球のための肉体改造。「キャンプで重くなりすぎたから少し落として、今が一番いい」。ベスト体重80キロで去年までのズボンははけなくなったが球速は増した。

 そんな大きくなった姿を、恩師に届けた。中高時代の監督だった神谷善隆監督(44)が観戦。試合前日、メールで「明日絶対勝てよ。甲子園で」とげきを飛ばされた。高校時代に届かなかった聖地。
平良は「5年前、来たかったところで勝てて良かった」とウイニングボールを手渡した。

 外国人枠の関係で抹消されたウィーランドの代役で得た登板機会。22歳以下の先発ヤングマンで臨んだ阪神3連戦は1歳年下の飯塚が好投し、前夜は同い年の東が完封した。
「東の半分しか投げられなかったけど、あの2人に負けないように投げた」。最後のヤングマンがトリを飾り、チームはAクラスに返り咲いた。【栗田成芳】