結果の伴わなかった春を耐え忍び、逆風の中でも前に進むことをやめなかった。月間打率は.202(4月)→.264(5月)→.273(6月)→.293(7月)と右肩上がり。
8月もここまで.298と、グラフの角度は依然として上向きだ。

 まだまだ戦いの最中だが、ふと足を止めて振り返った時、こんな言葉が漏れる。

「最初は出ばなをくじかれて、どうしようかと……。でも、そこからコツコツと積み上げてきて、それが月ごとに自分の力になってるんじゃないかと思います。
監督がいつも言ってるように、毎日が新しい一日。いい日も悪い日もありますけど、自分でやることを決めて、前向きに積み重ねていくことは本当に大事なんだと教えてもらったシーズンかなと思います」

 サヨナラの一打でヒーローとなった翌日は、守備で見せ場をつくった。6回、ドラゴンズのルーキー京田陽太が放った、三遊間への強烈な打球。飛びついて好捕した倉本はすぐさま立ち上がり、速く正確な送球をファーストミットに届けた。

『プロ野球ニュース』でも“PLAY OF THE DAY”に選出されたファインプレーだが、26歳はクールな態度を崩さない。

「あれは……普通です。そうやって選んでもらえたのはうれしいですけどね。次は(『報道ステーション』の)“熱盛”で紹介してもらえるようにがんばります(笑)」

 普通とは言いながらも、ここにきて自身の動きがよくなっている感覚はたしかにあるという。
「前半はまるっきりダメで、その原因が何なのかはシーズンが終わってから考えたい。足を引っ張ったぶん何とか取り返せるようにとは毎日思ってます。体も前よりキレてきた。野球はやっぱり、走攻守つながってるんだと感じますね」
 打てるようになったから守りのリズムが出てきたのか。あるいはその逆なのか。いずれにしても攻守が互いに作用し、倉本の中に好循環を生んでいる。