ここに来て被本塁打だけは少なかった斎藤が、今シーズンワーストの3本塁打を浴びた。

マウンドの彼は「これで良いんだ」という空気すら感じた。いずれもソロ本塁打。楽天オコエ舛田フェルナンドという、
今日の対戦した中ではパワーに長けた打者ばかり。常に自らが見つけた課題に取り組み続ける斎藤の意図を見つけた。

斎藤は常々真っ直ぐに対する拘りを露にしている。時には球速であったり制球であったり。ようやくここに来て、
彼が理想とする真っ直ぐに急速に近付いた結果がこの日の3被本塁打なのだと思っている。

上背もなく筋肉質ではない彼は、巨人菅野やヤンキース田中の様な剛球は投げられない。
しかし回転数を自在に操る事が出来たら?今までなかったタイプの真っ直ぐで勝負出来る投手が誕生する。
ここ一番伸びのある回転数を増した真っ直ぐが、低めボールゾーンからストライクになる。チェンジアップの
逆、ギアアップストレートと言おうか。数年間佑シームと呼ばれる沈む球に慣れた打者は面喰らうだろう。

ここ一番でギアアップストレートを投げられると、例えバットに当てても内野フライの確率が高まる。
ゴロを打たせる佑シームと組み合わせれば、アウトカウントを自在に積み上げる事が出来る。

しかしこのギアアップストレートは諸刃の剣で、甘く入ると大きな痛手を負う。速球投手が被本塁打が多いのは宿命に等しい。
斎藤は実戦でより使える球にする為に、敢えて走者がいない場面でテストをしたのではないだろうか。
ギアアップストレートを甘く投げ、打たれてる事でデータを次に生かす。斎藤らしさに溢れた内容だと
後から気付かされる。

もう彼にもチームにも残された時は少ない。早くこの球を仕上げ引っ提げて、一軍のマウンドで羽ばたいてもらいたい。
ギブアップストレートと言わせない為に、あの夏以上の輝きを見せてくれるだろう。