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ステロイド投与が引き起こす免疫不全とは

 では,ステロイドによってどのような免疫不全が起きるのでしょうか。最も有名なものは「細胞性免疫の低下」ですね。ステロイドを投与するとT細胞,なかでもCD4陽性ヘルパーT細胞(Th)が低下します2)。第11回(3220号)で説明したとおり,Thは樹状細胞により抗原提示されることで5つのsubsetに分化します。細胞性免疫で特に重要なのがTh 1,Th 2,Th 17でした。Th 1はIFN-γを産生することで細胞内寄生菌に対する免疫を司っていますが,ステロイドによる影響は特にこのTh 1に対して最も大きいとされています3)。

 それでは他の免疫不全はどうでしょうか。まず,ステロイドにより皮膚が菲薄化します4)。これにより「皮膚バリアの破綻」が起こりやすくなります。また,好中球に対する影響もよく知られています。特に重要なのは好中球遊走能の低下です。皆さんもよく経験されているかと思いますが,ステロイド使用患者では好中球が増加しますね。これは骨髄から好中球の放出を増加させることも一因ですが,好中球が血管壁に接着して血管外の炎症部位へ遊走しようとするのをステロイドが抑制し,結果として好中球が血管内に多くとどまるからです5)。そのため,ステロイドの投与により「好中球の機能低下」が見られるのです。

 最後に液性免疫への影響はどうでしょうか。ステロイド投与によりT細胞ほどではありませんが,B細胞も低下させることが知られていますし6),投与後数週間で免疫グロブリンも可逆的に低下します7)。従って,「液性免疫低下」も軽度見られると考えられています。