■ペーパーで優しく拭いてあげるのがいちばん
人の皮膚は、洗いすぎれば汚くなります。洗いすぎによって常在菌もおらず、アルカリ性に傾いた皮膚は、バイ菌が繁殖するのに格好の環境です。それは、みなさんが考える「不潔」な状態ではないですか?

肛門に痛みやかゆみを感じている人は、まずは温水洗浄トイレの使用を控えることです。最初は、きれいになったのか不安もあるでしょうし、お尻が温水シャワーの心地よさを求めもするでしょう。
でも、そこを踏ん張って、ウンコをしたらペーパーで優しく拭いてあげるだけにすることです。それが肛門を清潔に保ついちばんの方法です。

また、入浴時に肛門をボディソープなど合成界面活性剤の入った洗剤でゴシゴシ洗うのもよくありません。お湯で優しく洗い流してあげるだけで十分。
とくに、肛門に炎症が起こっている際には、洗いすぎないことです。皮膚の新陳代謝のスピードは、約28〜56日とされています。ですから、2カ月もすれば、かゆみのない肛門をとり戻せることでしょう。

■ビデで膣炎になる女性が増えている
温水洗浄トイレにハマっているのは、男性ばかりではありません。女性も「ウォシュレットがなくては生きていけない」という人が増えています。
ただ、女性で「ウンコのあとに肛門を洗わないと痛くなる」という人は少ないようです。
女性の皮膚常在菌のほうが強力なのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。女性は、「ビデ」機能を使って、もっぱら「前」のほうを洗っているからです。

最近、女性の膣炎が増えています。この原因も洗いすぎによるものです。

日本の女性は、歴史上、膣をビデで洗う経験はありませんでした。「洗えばきれいになる」と、オシッコのたびに膣を洗うようになったのは、ウォシュレットが販売された1980年以降のことです。

しかし、膣も「洗いすぎれば汚くなる」のは同じことです。女性の膣には、デーデルライン桿菌という乳酸菌がいて、膣をきれいに保っています。この菌は、膣のグリコーゲンをエサにして膣内を酸性に整えます。つまり、正常な膣は酸性なのです。

酸性の場所では、雑菌は増殖できません。原始時代、ろくに体を洗っていない男性と雑菌だらけの環境で交わっても、女性は膣炎になどなりませんでした。デーデルライン桿菌が膣を酸性に保ってくれていたからです。

■ビデで膣内が中性になり、雑菌が繁殖する
ところが、現代の女性は膣炎になります。「洗えばきれいになる」とばかりに、オシッコのたびにビデで洗っているからです。
そのたびにデーデルライン桿菌は洗い流され、膣は中性にかたよっていきます。そうなると、雑菌が膣内で増殖し、おりものが出てきて、膣炎となってしまうのです。

みなさんは、トリコモナス原虫を知っていますか? この原虫は、男性の体内では悪さをしない微生物です。実際、トリコモナスを尿道に飼っている男性は多いのですが、痛くもかゆくもないので、本人は感染に気づきません。
しかし、そうした男性が女性の膣にトリコモナス原虫を入れてしまうと、この原虫はデーデルライン桿菌のエサであるグリコーゲンを横どりするようになります。
エサを奪われたデーデルライン桿菌は数を減らし、結果、膣内は中性になり、雑菌が繁殖して炎症を起こすことになります。これをトリコモナス膣炎と呼びます。

洗いすぎで生じる膣炎は、このトリコモナス膣炎と同じ状態です。原虫はいなくても、洗いすぎてしまえば、トリコモナスを膣内で育てていることと同じ状態を生み出すのです。

>>3へ続く