家から自転車で20分ほど行った所に寂れたドライブイン(と呼べるほどのものではないが)があって、そこにうどんとそばの自販機がある。
と言ってもカップ麺のやつではなく、冷蔵された麺と具が自動で湯切りされ、熱いだし汁が入って出てくる。
これを喰いに深夜のサイクリングに出掛けるのが楽しみ。
特に冬の午前4時ごろ、いちばん寒くなるころ自転車を漕ぎ出し、張り詰めた空気を裂く様にして、三桁国道沿いのそこだけ煌々と光を放つ目的地へ辿り着くまでの夜道は格別だ。
ブゥーンと機械音がやかましい自販機を並べただけの、ひと気のないプレハブ小屋に入る。
眼鏡が曇るのももどかしく、うどん・そば自販機に250円を投入し、「天ぷらそば」のボタンを押すとニキシ―管がカウントダウンを始める。
この自販機はおそらくは80年代くらいに製造されたのであろう年期物、衛生的にどうなのかと言う人も居そうだが、気になる人だけが気にすればいい。
25秒経つと「チーン」と昭和の音を立ててそばが出来上がる。汁がこぼれない様に細心の注意を払いながら取り出し口から、チープなプラスチックの器に入ったそばを取り出す。
たっぷりのそば、つゆは地元では珍しい淡いスープ。具はかき揚げと、七味の代わりか青トウガラシ入り、大きなエビ天が入っていれば大当たりだ。
これを一気にすするのは無上の幸せだ。陳腐な表現ではなく本当にそう感じる。
五臓六腑が暖かいもので満たされ、外へ出ると冷気が心地よい。愉悦に浸りながらねぐらへ帰る道は、まだ夜の続きだ。