K-POPの“聴きやすさ”重視のトレンドがグループの真価をより総合的なものに ILLIT『SUPER REAL ME』評
https://realsound.jp/2024/04/post-1630425.html

「Magnetic」はアタックのやわらかくドリーミーなシンセのアルペジオやエレクトリックピアノが高域でゆらめく一方で、ビートもベースラインもかなりソリッドで太い。リリース情報ではpluggnbとハウスのハイブリッドと形容されているが、端的に言えばウワモノがpluggnb的で、基本となるビートがハウス、というところだろう。
テンポがハーフになる部分は、リードシンセのさりげなくもメロディアスな展開も含めpluggnbへの目配せになっている。

とはいえ、そのクオリティは高いとしても、個人的にはいささか単調で、ここぞという聴きどころに欠ける印象は拭えない。むしろ、かなり意図的に耳を捉えるひっかかりをなくしていこうとしているようにも思える。
アンチクライマックス的なゆるいメロディや、2小節ごとに完結して継続的なグルーヴを削ぐことで高揚感を高めすぎないビートとベースライン。サビの〈You, you, you, you……〉のリフレインの刻みにしても、ちょっと機械的でドライだ。
そのシンプルさゆえに耳に残ると言えなくもないが、クセになるほどユニークでもない。フレーズ自体のひねりもなければ、ひねりのなさを魅力に昇華する大胆さもない。すべてがほどほど。
このあたりに、その耳あたりの良さとクオリティに比して、こころから「Magnetic」最高! と言い切れないもやもやがある。

『SUPER REAL ME』はまさしく「イージーリスニング」的に設計されているように思える。かつ、それはかなりの程度成功をおさめている。クオリティも高く、結果もついてきている。一方で、そうした成功が必ずしも音源としての興味深さと結びつくわけではないという実例にもなっている。

しかし、MVやパフォーマンス動画を見ると楽曲の印象とはまるで違う、フィジカルを強調するきびきびとしてアスレティックなパフォーマンスを披露している。
活力あふれるパフォーマンスは音源の単調さを補って余りある華があり、音源、アートワーク、MV、そしてパフォーマンスまでをトータルで味わわなければそのグループの真価を味わうことができないのだということを改めて確認させてくれる。