味覚を失った状況を説明できる可能性がある。ハーバード大学医学大学院の研究者らがこう指摘した。

  研究者によるヒトとマウスのゲノムデータの分析で、鼻の奥にある特定の細胞には、新型コロナが体内侵入で標的とする明確な形状のタンパク質があることが判明した。
これらの細胞の感染は直接的または間接的に嗅覚の変化につながる可能性があると、研究者らは28日に公表された論文で説明した。

  世界各地の医師らは新型コロナウイルス感染症(COVIC19)患者が突然に嗅覚と味覚を完全もしくは部分的に失った原因不明の症例を報告している。
嗅覚障害や味覚障害は今回のパンデミック(世界的大流行)に関係した「重大な症状」だと、米国耳鼻咽喉科・頭頸部(けいぶ)外科学会は22日に発表した。

  同学会はこうした症状を感染のスクリーニング手段のリストに追加するよう提案。その他の既知の原因なくこうした症状が見られる人は自己隔離を検討し検査を受けるべきだとした。

  ハーバード大の医学大学院神経生物学部のデービッド・ブラン氏とサンディープ・ロバート・ダッタ氏は、新型コロナ感染によって生じた鼻腔(びくう)の炎症が嗅覚を妨げる可能性があると指摘。
または、ウイルス感染で正常な嗅覚機能に必要な鼻上皮の細胞が損傷する可能性もあるとの分析を明らかにした。その上で、嗅覚喪失の原因究明が診断をサポートし疾患の影響を判断する上で重要な意味を持つとしている。

  さらに、患者の嗅覚障害が長引けば、栄養失調に加え、煙やガス、腐った食べ物など危険な臭いを感じることができないことに伴う損傷、鬱(うつ)病をはじめとする精神疾患につながるリスクを挙げた。