東京五輪の聖火リレーの中止を検討すると表明した島根県の丸山達也知事は25日、
関係省庁や国会議員を訪ね、方針を説明した。
新型コロナウイルス対策が理由とするが、
感染者が比較的少ない島根がなぜ、首都圏が舞台の五輪に反旗を翻すのか。

丸山知事は関係省庁などに要望書を渡して回った。
要望書は「五輪は感染リスクが高まるイベント。感染対策強化が講じられなければ五輪で再拡大を招き、
再び緊急事態宣言が出れば、島根の飲食店は厳しくなる。
五輪開催を前提とした聖火リレーは現状のままでは中止とせざるを得ない」とつづる。

島根では、新型コロナによる死者は出ていない。
だが、首都圏などに緊急事態宣言が出されている影響で経済が止まり、
宣言地域以外の島根の飲食店も苦境に陥っている、と丸山知事は訴える。
国の観光支援策「Go To トラベル」が止まって島根への観光客が激減したほか、
宣言に伴う飲食店利用の自粛意識も影響しているという。

■自民系県議「五輪、楽しめる状況なのか」

島根県は、国に緊急事態宣言地域以外の飲食店への支援を訴えるが、県独自の飲食店への現金給付はしていない。
県財政課の担当者は「島根はもともと財政基盤が弱く全国でも最低レベル。
国からの追加の支援措置がなければ、給付金は不可能だ」と言う。

国は「地方創生臨時交付金の活用を」と言う。
島根分は約234億円あるが、丸山知事は「(金額が)飲食店などに現金給付できるレベルではない」とする。

県幹部の一人は「知事は政府に本気で問題提起を届けたいと思っている。
その手段としての聖火リレー中止検討表明だ」と、知事の態度に理解を示す。
「東京の感染状況が改善されること、政府が地方と大都市との不平等をなくす対応をすること。
その二つがなければ、知事は中止するつもりだろう。知事は本気だ」

自民系会派の会長の五百川純寿(いおがわすみひさ)県議も、
「五輪を楽しめる状況なのか、都会と地方の格差の問題をどう考えるのか。
五輪開催に向けた条件がそろっているとは言えない。
全国の中山間地を抱える自治体も思いは同じだと思う」と話す。
一方で、「全都道府県を通る聖火リレーに、島根だけぽっかり穴を開けるわけにはいかない」とも漏らす。

島根県関係者によると、丸山知事は今回、西村康稔経済再生相らへの面会を希望した。
だが、実際に面会できたのは副大臣や担当職員だった。