27 丸山 真男は、「日本政治思想史研究」の中でこう書いています。
「(江戸の商人階級は)新しい生産方法をつくり出す力を欠いた商業=高利貸資本でありその利潤獲得は決して正常的とはいひ難くむしろ暴利資本主義の性格を濃厚に帯びてゐた。
  彼等は封建的権力に寄生し、それが農民より収取する貢租を直接間接に吸取ることによってのみ生存しえたから、一旦権力の怒りに触れるやもろくも費えるはかない存在にすぎなかった。
  かの淀屋辰五郎の運命こそ一般の商業資本の立ってゐる地盤の脆弱性の典型的な証示であった。従って彼等が蓄積した富は忽ち快楽的な蕩尽に泡の如く消えて行った。
  紀文・奈良茂の数々の馬鹿げた逸話はそこに誇張があるにしても町人的生活態度の一面を語るものではあろう」。