三宅洋平(以下、三宅) 今日はTPP協定についての対談ということでよろしくお願いします。山田さんは、
既に苫米地(英人)さんと素晴らしい対談をされていますが(編注:「TPPは絶対批准させてはいけない」、
「同」第2弾)、TPPをめぐっては最近、協定文書や説明文書にたくさんの誤訳や表記ミスが見つかりましたね。

山田正彦(以下、山田) TPP協定文書は全部で6,300ページありますが、日本政府が翻訳しているのは
1,800ページだけなんです。今回見つかった間違いも、あくまでもその1,800ページの中だけでなんですね。
もともと、奇妙なことに、TPP協定文書には日本語の正文がないんですよ。

三宅 正文というのは、正式な条約文ということですか。

山田 ええ。このTPP協定というのは、多国間との契約ですが、そうした場合は通常、それぞれの言語で
正本と副本を作成するんですね。それで、正本はお互いに交換し、副本は参考資料として自分たちで
控えておくんです。ところが、今回のTPP協定に関しては、日本語だけが正文になっていないんです。

三宅 他の言語は正文になっているんですか?

山田 英語、フランス語、スペイン語にはなっています。にもかかわらず、なぜ日本語だけ正文になって
いないのかと関係者を問いただしたら、「政府が求めなかったから」というんです。

三宅 それはいつの政府ですか?

山田 現政権です。これは結構な問題で、日本語の正文がないと、結局、英語での解釈になってしまいます。

三宅 ということは、不平等条約ですね。

山田 そうです。たとえば、農産物の関税撤廃については、英語で「撤廃」となっているところが、日本語では
「関税措置」となっている。「措置」と「撤廃」では全然違うでしょう? そんな状態にもかかわらず国民に対しては、
「農産物の重要5品目に関しては(関税撤廃から)守られた」と説明しているんですよ。
もし、TPP協定が日本語での正文になれば、政府は国民に本当のことを説明しなければいけなくなる。
そうすると国会審議がもたないし、国民も怒るでしょう。