逆転した非正規と正規の賃金

 契約社員やパート・アルバイト労働者に依存した事業というのも不健全かも
しれない。厚生労働省が14年に発表した就業形態の多様化に関する調査による
と、企業が正社員以外の労働者を活用する理由で最も多かったのは「賃金節約
のため」(38.8%)だった。が、「欧州のコンジェントワーカーのように非正
規労働者の方が正社員よりも賃金が高くあるべきという意見もある」(中澤准
教授)。非正規労働者はあくまで一時的に不足した労働力を補うために雇用す
るものという考え方だ。

 従来、こうしたパートやアルバイトといった非正規従業員は「家計の補助的
な収入のための仕事とみなされ、生活できない水準の時給でも無視されてき
た」(中澤准教授)。だが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、労
働者の4割が非正規で働いている。所得金額の階級別統計を見ても、時給1500
円相当より低いとされる所得金額200万円以下が全世帯の17.9%(17年、国民
生活基礎調査)を占める。

 仕事のやり方や事業そのものを改革して生産性を高めるには大きな苦労が伴
う。最低賃金が経済水準より低ければ、業務の一部をそうした低賃金の労働者
に任せることで見かけ上の生産性を高められてしまう。いわば、まやかしの生
産性向上だ。

 低賃金の労働者に依存したまやかしの生産性向上は、本質的に業務に従事す
る人材の数を減らさない。労働人口が減少し、人手不足が各地で叫ばれている
現状を打開するには、「最低賃金を見直して、安い労働力に甘えていた状況か
ら脱却するべき」と、中澤准教授は訴えている。
ソース↓
低すぎる最低賃金が人手不足の真の原因:日経ビジネス電子版
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00026/031900007/
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00026/031900007/?P=2