「まず、「受容」は非常にわかりにくい概念であるといえる。受容は忍従と同じだと思う
人もいるだろうが、実際はその反対である。受容とは、感情を調整もしくは変化させよう
とする前に、させておく、またはそのままでいるという、感情への積極的な反応を示して
いる。感情を気づきのなかにとどめることは、どのように反応するかを決める前に、それ
らの感情が存在しているということを確認することといえるだろう。この課題には、意識
的な遂行力とエネルギーが必要とされる。一方忍従は、受動性や無力感を暗に含んでいる
のである。

(中略)受容は非常に重要である。ネガティブな感情、身体感覚、思考を受け入れること
に抵抗すると、再発に関連する自動的・習慣的な心のパターンへ急速に逆戻りしてしまう
からである。これは、「このように考えてしまう自分は愚かだ」「これに対処できるよう
に強くならなければならない」といったような発言にみることができる。他方、望まない
経験に対し、受容すること・させておくこと・そのままでいることといった関係づけを意
図的に行なうことは、多くの場面で効果的にはたらく。まず、より意識的に注意を向ける
ことで、注意が過去の思考や気分に自動的に「ハイジャック」される傾向を弱めることが
できる。それによって、習慣的な反応の連鎖を最初の段階で切ることができるのである。

次に、経験に対する基本的立場を、「望まない」というものから「オープンである」とい
うものへ変更することができる。そして、自分の思考が正確であるかどうかを理解する機
会が与えられるのである。「これ以上続いたら私は叫び出してしまうだろう」というよう
な思考について考えてみよう。その思考をできるだけそのままにさせ、それが身体に与え
ている影響に注意しながら、その強さの瞬間ごとの変化を観察してみよう。それは、その
思考が消失することを知る機会になる。最初の恐ろしい予測は当たらなかったのであ
る。」
(『マインドフルネス認知療法』ジンデル・シーガル、マーク・ウィリアムズ、ジョン・ティーズ
デール著、pp.174-175)