死は生命にとって最高の発明

これは、11年10月に亡くなったアップル創業者スティーブ・ジョブズの言葉である。
製品の外装だけでなく、内部のマザーボードにまで美しさを求めたジョブズは、チップや回路をもっとシンプルで魅力的な配置にしたいと考えた。
技術者たちはマザーボードをのぞく者など誰もいないと反論したが、これに対しジョブズが放ったのがこの言葉であった。

製品の本質を重視する彼の精神は、禅の一派である曹洞宗の開祖・道元の教えに通じるところがある。
たとえば道元の教えを弟子たちがまとめた『正法眼蔵随聞記(しょうぼうげんぞうずいもんき)』(岩波文庫など)には
「実徳を蔵、外相を荘(かくしてかざらず)」(内面をよくして外面を飾らない)という言葉が出てくる。