死ぬ前の吉良上野介に、話を戻そう
彼は前日の茶会の接待の疲れで寝ていた
もう、寄る年波で若くはない
赤穂浪士のことは常に気がかりだったが、無理に考えないようにしていた
謀反の罪を覚悟で、彼らは来るかもしれない
それに、自分は幕府には邪魔者だ
誰も助けてくれないかもしれない
それでもーー、家督を譲る養子や上杉家に養子に出した実子のため、自分は頑張らねばならない
名家の先祖に恥じないよう、生きねばならない
そんなことを日々考えながら、過ごしていた
風雅な茶会の趣のあるやり取りに、しばし世を忘れ、興に浸った
そんな夜ーー、
怒号で目が覚めた
「何事ぞ!」
飛び起きると同時に部屋のふすまがあいて、隣から家臣が飛び込んで来て、膝まずいた
「殿様! 曲者でござる 赤穂浪士に、間違いございませぬ!」
「何を!」
暗然とした
ついに来たか……、