>>209
舎衛城に難陀と云う女の人があって、其の日にも困る生計で人に貰って生活して居た。
或時、何処かで物貰いして居ると長者が色々の物を捧げて供養して居た。
これを見た難陀は、こうして同じ人間と生れながら自分の現在の境遇と引比べて、余りの差違のあるのをなげいた。
漸やく一銭を得たので油屋や行った。
油屋の主人は「そんな位買って何になさるのか」を問うた。
難陀はそのわけを話すと主人は感心して二倍も三倍もまけてくれた。
早速それを祇園精舎に供えて供養した。
丁度長者も居った。
「願わくば此の功徳を以って来世には明るい仏智を得て多くの人の無明を照し給え」と。

夜が明ける様になったら長者や他の人のは消えてもこの難陀の捧げた燈のみ消えなかった。
神通第一とされる目連がそれを吹いても消えない。三度吹いても消えない。
お釈迦様は皆に云われるには
「難陀は大菩提心をもってしかるには、四大海水をもって覆してもあかりが消える事がない。」
とて難陀の心をほめられたり。
ほんとの大菩提心を得て……… その金も………
長者の万燈より貧者の一燈とは此処より出しならん。



日本でも平安時代の昔より万燈籠を行う一方で、長者の万灯よりも貧者の一灯と言われ続けてきました。