悪魔としてのモロク

ジョン・ミルトンの「失楽園」には、聖書の異教神が堕天使として数多く言及されており、その中にもモロクの名は登場している。
その紹介文は“人身御供の血にまみれ、親たちの流した涙を全身に浴びた恐るべき王”、“天において戦った天使のうち最も強く、最も獰猛な者”と険呑なもので、万魔殿における会議では主戦派の筆頭として弁を振るっている。

そして、コラン・ド・プランシーの「地獄の辞典」のモロクは、玉座に座す王冠をかぶった牛という王権を戯画化した挿絵で描かれている。
モロクは涙の国の君主であり、生贄の人間を受け取る為にその腕は長く、アモン人が祀ったモロク象の内部には、七つの戸棚が作られていて、
一つには小麦粉、二つにはキジバト、三つ目は牡羊、四つ目は牡山羊、五つ目は子牛、六つ目は雄牛、そして七つめは子供を入れるためのものであったと紹介し、またミトラ神と同一視している。

特にフランスの小説家ギュスターヴ・フローベールは著作「サランボー」の中で、モロクの祭司が儀式の中で狂乱して自傷する姿、凄惨な幼児供犠の場面を書きあげ、悪魔、邪神としてのモロクのイメージを加速させたとされる