「日常性からの脱出」への熱望

この四人の話を聞いて、バカバカしいと思う人もいるだろう。
しかし、冷笑を浮かべようと、
四人の話には簡単には否定できない現実も含まれている。

たとえば、会社の中で心から打ちとけて話ができない現実がある。
これは若者だけに限らず、ある調査報告では、
中高年でも悩みごとを会社の同僚に打ち明けることの
できる人は数%しかいないという。
精密機械メーカーに勤めていた先のOLは
「青山塾でとくに用事がないときでも、
会社が休みの日は真っ先に西荻窪に行った。
新しい会員さんの世話、といってもお茶を出したり、
片付けをしたりすることぐらいですが、
みんなと会うのが楽しみでした」と話す。

また、西洋医学でも東洋医学でも治らない病気があるのも現実である。

学校から社会に出て、何かをしようと思っても、
行きつく先は「会社」である。現代の日本社会は
「会社主義」(馬場宏二東大教授)、
「会社本位主義」(奥村宏龍谷大学教授)と
表現されるほど会社が主役である。

その会社では、競争に打ち勝って出世
(あるいはワンランク上の仕事を)するか、
それとも負けて年齢に比較してレベルの低い仕事に
甘んじ続けるしかない。会社に入らず、
そのシステムに巻き込まれないような
生き方ができる場はごく限られている。