専業主婦だった妻は土曜、日曜もなく、ほとんど毎日、救霊室のある杉並区西荻窪のマンションへ通った。毎朝、五時過ぎに起床、二男と年子の兄の弁当をつくる。八時には家を出て、家に帰るのは夜十時、十一時になる。もちろん無給で、交通費も自前だ。
彼女が日に三件は行う救霊の玉串料は一件当たり十五万円とか三十万円で、それらの金はすべてコスモメイトに入る仕組みである。
「あの子を一人で家に残すのは心配でした。いつ発作で倒れるか分からないんです。実際、お兄ちゃんが学校から帰ってくると、怪我をして部屋の床が血だらけのこともありました」
一方、夫は商社マンとして欠かせない酒、ゴルフなどの付き合いを一切やめた。仕事が終われば、真っすぐ家に戻って兄弟二人に夕飯を食べさせねばならない。当然、転勤を伴う人事異動なども受け入れられるはずもない。
「深見から人を介して『会社も辞めて奉仕しなさい』と言われたが、それだけは断った。上の子が『お父さん、僕たち、もう家もない。生活だってめちゃめちゃだ。会社まで辞めるなんて絶対にイヤだ』と泣いて反対したからです」