被告人は取り調べの際,被疑者に対して「お前の人生めちゃくちゃにしてやるぞ」「手を出さないと思ったら大間違いやぞ
」と発言しているが,取調べの状況,担当した警察署の社会的風評その他の事情を総合的に勘案し,社会通念上,これら
の発言は警察組織が暴力団同然であり,暴力団員のごとく国民の人生をめちゃくちゃにしようとし,国民に手を出して暴
力を振るうかのごときニュアンスを有すると認められるものであって,しかも被告人の暴言は単なる言葉のあやではなく
,テープレコーダーに残されている取調べの音声記録には被告人本人の人格の悪性が迸っているのであって,単なる警
察官による陵辱や加虐の域をはるかに超え,いわば腐敗して暴力団員同然と化した極悪な警察官による最高度の暴行
陵虐行為であり,刑法第195条が保護しようとする公務の適正およびこれに対する国民の信頼を著しく紊乱するもので
あって,被告人の行為が公共の福祉に与える害は甚だしいと言わねばならない。また,被告人は,取調べで自己の人格
の核心たる悪性をいかんなく発露しているにもかかわらず,マスコミ報道の前では笑顔を作るなど,表面的に善人を決め
込んで好印象を振りまき,なるべく社会的評価を落とさず,刑罰を軽くしようという卑劣な思惑も見て取れるのであって,
根深い犯罪性向を有するその人格は改善し難いものと言わねばならない。このように,被告人が警察の公務の適正と
国民の信頼に与えた害悪およびその人格と行為の悪性,無反省な態度を総合勘案すると,被告人に対しては,特別公
務員暴行陵虐罪の最高刑である七年の懲役刑を科するのが相当である。