http://www.geocities.jp/yu77799/731/yougo.html
731部隊(X) 人体実験、これだけの根拠


 郡司氏にはもうひとつ、『証言 七三一石井部隊』の三カ月後に出版された、『真相 石井細菌戦部隊』という著作があります。こちらには、「総務部調査課写真班 T・K」をはじめ、5人の証言が収められています。

3 W・M(開業医、元731部隊員)の投稿

 元731部隊員である一開業医の、大学学友時報への投稿です。
 原文では氏名・医院名とも明記されていますが、名が知られていない人物ですので、プライバシーに配慮して、ここではイニシャルに変えました。


   ―――
投 稿

「悪魔の飽食」を読んで
昭十七年卒 W・M (「ゆう」注 原文実名) (元満洲第七三一部隊員)

 往きつけの理髪店で、整髪中にそこのおやじが

「先生!昔は随分ひどいことをした部隊があったものですね。何でも満洲の第七三一部隊とかいうことです。私は昨日『悪魔の飽食』という本を求めて来たのですが、とうとう徹夜して読んでしまいましたよ。」

と、その部隊の残忍な仕打を縷々私に話すのでした。 彼はまさか客の私が戦時中その部隊に青年将校として勤務していたとは、つゆ知らなかったことでしょう。

 今、戦後三十七年にもなって、何故か曽って日本軍が冒した数々の罪悪が、教科書問題を絡め瀑(あばか)れています。善意に解釈すれば、
忌しい戦争を忘れてはならない、再び戦争を起してはいけないととれますが、悪意にみれば日本式エコノミックアニマルで恥も外聞もなく儲けようとする商魂の発露ともとれるのではないでしょうか。

 満洲第七三一部隊が細菌謀略部隊で、生体実験をしていたとの悪名は、これまでも時々書かれ世の風評となったことがありますが、フィクション式のものが殆んどであった。
併し今回の森村氏の「悪魔の飽食」は、私の体験からしても、殆んどその実相を伝えるものと思います。

 今迄固いベールに包まれていた此の部隊の実体についての取材の苦心には深く敬意を表しますが、よく読んでみると作者自身あまりにも主観的になりすぎ、
又読者の共感を得るためにも部隊の惨虐無情のみが強調され過ぎてはいないでしょうか。昭和元禄とも言われる此の平穏無事の世に生れ育った幸福な
人々には此の一書は恰も無免疫動物に対する細菌の如く強烈なショックを与え忽ちにしてベストセラーにのし上ったのでしょう。

 勿論、生体実験は人間の尊厳を無視した許されるべき行為では決してないと思いますが、戦争という是亦許されざる行為の中にあって、
徒に一発の弾丸で処刑されてゆく人命を少しでも活用して将来の人類生存への條件を真剣に探究していった第七三一部隊の功績をも評価してもよいではないでしょうか。

 実際此の実験に参加したスタッフは蛇でも鬼でもなく、自己の先命を賭しても人類を守るべき使命を有った医師達であったのです。
従って幾ら命令とは言え平易な気持で行っていたわけではなく、戦後何年経っても心の底に晴い影を抱いて消えることはないのです。敢えて自ら世に発表したりしない理由もそこにあるのです。

 満洲第七三一部隊、所謂石井部隊が表看板にしていた防疫給水部の業務は、全軍、師団にゆきわたり随分と貢献したと確信しています。私は茲に二、三の例を挙げてその一端を紹介してみましょう。
 或る歩兵連隊(約兵員三〇〇〇名)にチフス患者が多発した時、他の衛生機関、例えば陸軍病院が防疫にあたったとした場合、菌検索ですら五、六日は要し、その間チフスはどんどん蔓延してしまうでしょう。

 ところが第七三一部隊(本部、支部とも)がやると、さっと現場へ乗り込み僅か三時間足らずで全員の検便、採血を了え、一昼夜培養しもう翌日には患者並に保菌者を発見し、消毒隔離その発生の原因且つ
救急の治療までやってのけるのです。それだけ迅速、正確な処置が出来る優秀な人員と器材を有っていたのです。現在でも仲々これだけの成果を上げ得る機関は少いでしょう。

 又大陸の戦争では飲料水の取得が困難なことで多く苦労させられました。目前に泥沼や濁ったクリークが横たわっていてもどうにもならない。
此の部隊がいると、先づ二、三分で毒物検知を行い、毒物がないと分れは「あっ」という間に石井式濾水幾を用い無害な美味しい水を充分に兵員に給水出来たのです。