日本に広がる新たな飢餓

「日本でも同様の『新たな飢餓』がすでに相当の規模で起こっている」と、
阿部彩さんはいう。
国立社会保障・人口問題研究所の社会保障応用分析研究部長であり、
貧困問題の専門家である。
同研究所が2012年に行った「生活と支え合いに関する調査」で
「食料の困窮経験」を尋ねている。それによると、
過去1年間に経済的な理由で家族が必要とする食料が買えなかったという経験を持つ
世帯は、14.8%にのぼる。
6世帯に1世帯が食料の困窮を経験していることになる。低い数字ではない。
「貧困というと、私たち日本人がまず思い浮かべるのは、
ホームレスのような人々です。
衣食住の最低限を満たせない絶対的貧困層。
しかし今、露わになってきている新しいかたちの貧困は、
それとはかなり様態が違います。家もあれば身なりもきちんとしていて、
携帯電話も持っている。ふだん接していて貧困者とはまず気づきません。
しかし、実際はその日食べる物にさえ困り、借金も抱えている。
そういう様態の貧困です」
目に止まりにくい「見えない貧困」が、日本にもあるのだ。