江川が巨人に入団して初めて甲子園へ行った時のこと。
外野フェンスに沿ってのランニングを命じられたが、阪神ファンの野次に
身の危険を感じ戸惑っていた。また入団の経緯からチーム内でも浮いた
存在だった江川に救いの手を差し伸べるチームメイトもいなかった。
困り果てて一人立ち尽くす江川。
その時、「おい江川、一緒に走るぞ」と声が掛かった。
長嶋監督だった。
長嶋は外野スタンドと江川の間に入ってまるで江川を守るようにしてランニング
に付き合った。ファンからの野次にも「江川、気にするんじゃないぞ。お前は
野球に専念すればいいんだ。他の事は何も心配しなくていいぞ」と励まし続けた。

江川は泣きながら走ったそうな。