「野球は言葉のスポーツ」(伊東一雄・馬立勝)より
ナショナル・リーグができてまだ10年位しか経っておらず、
プロ野球だけで生計を立てるのは難しい時代の話。

フィラデルフィア・フィリーズのファーストを守っていたシド・ファーラーは
可愛い娘をたびたび球場に連れて来ていた。娘は綺麗な声をしていたため、たちまちチーム
のマスコットキャラとなった。
ある日試合が終わった後、娘が泣きながら1人で立っていた。シドのチームメイトが
「どうしたの?」と聞くと「パパがいないの。」と答えた。チームメイトがシドを探すと、
シドは外野のスタンドで空き缶をずっと拾っていた。「娘が綺麗な声なので音楽学校に
進学させてやりたいんだが、金が無くてね。こうして毎日空き缶を拾っているんだ。」
当時は野球だけで生計を立てるのは難しかった。そこでシドは空き缶を拾うバイトで
必死に金を稼いでいたのだ。これを見たチームメイトはシドの心意気に感動し、次の日から
チーム全員で空き缶拾いをはじめたという。

娘は音楽学校に無事に進学でき、数年後有名なオペラ歌手、ジェラルディン・ファーラー
として故郷に戻ってきた。ちなみにジェラルディンはロマノフ王朝最後の皇帝ニコライの想われ人
だったという説もある。