0587元武雄市長物語
2019/01/21(月) 14:15:49.52ID:qCx4d2kK0樋渡「そうですか、それは残念です。
でも、契約書見て後悔するのは貴女のほうだと思いますよ?
それと、もし仕事をすっぽかしたら、貴女の所属事務所にシッカリ報告いれときます。
違約金ガッポリじゃないですかねえ? 支払いきれるのかなあ?
たしか貴女、まだ経験の浅い一介の雇われ声優さんですよねえ?
それに世の中、どんな業界も信用が第一なんですよ。
私的な都合で仕事に穴を開けるような奴を信用する人、いるんですかねえ?
今後の活動に影響出なきゃいいんですけどねえ?
ま、僕は貴女が賢明かつ有能な方だと信じていますよ。
貴女の台詞にもあったでしょ、何でも出来る!何でも慣れる!って。 ネ?」
ニヤニヤしながら残酷な現実を突きつける樋渡。
自分の都合で勝手に台詞を改ざんしておきながら、随分な言い草である。
市長時代から全く変わっていない。
そんな慇懃無礼極まりない暴言に、声優の足が止まる。
声優「くっ・・・!」
誰がどう見ても明らかにおかしな条件を、歯軋りしながら飲むしかない立場の声優。
アニメの仕事で人気と知名度が上がったとは言え、安月給で働かざるを得ない若手声優の悲劇。
立場が弱い相手の弱点へ漬け込むことにかけて天才的な樋渡の前には、なす術も無い。
その後、リハを行なう会場は重苦しい空気に包まれる。
誰からも、笑顔や声のハリが消えうせる。
たった一人、上機嫌な樋渡を除いて。
(つづく)