これは、わたしが小さいときに、村の茂兵(もへい)というおじいさんからきいたお話です。
 むかしは、わたしたちの村のちかくの、敦賀というところに小さなお城(しろ)があって、高木さまというおとのさまがおられたそうです。
 その敦賀から、すこしはなれた山の中に、「たかぎつね」というきつねがいました。たかぎつねは、ひとりぼっちの大ぎつねで、しだのいっぱいしげった森の中に穴(あな)をほって住んでいました。
そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出ていって、いたずらばかりしました。
畑へ入っていもをほりちらしたり、菜種(なたね)がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家(ひゃくしょうや)のうら手につるしてある下着をむしり取っていったり、いろんなことをしました。