山口は事件を起こす前日まで、一ヶ月にわたって肝臓治療のための入院をしていて、退院後、再び焼酎を一本まるごと飲んで行為に及んだと説明されている。

 もしそうだとすれば、私には分かることがある。自分自身、肝臓の極めて深刻な疾患を抱えているからだ。

 そもそも、肝臓を壊すほど飲むというのは、ほぼ独身者ばかりで、山口も2016年8月、8年間連れ添った妻子と別れて一人暮らしをはじめ、間違いなく、それが理由で、酒に溺れるようになったのだろう。
 妻や子供のいない寂しさを癒やしてくれるのは泥酔しかないからである。

 肝障害が原因での一ヶ月の入院とは何を意味するのか?
 単なる酒断ち環境? 冗談じゃない。病院は、そんな暇な場所ではない。山口に直接、死亡の危険が迫ったと認識されない限り、長期入院などありえない。

 私の経験では、最初、もの凄いだるさが襲ってくる。次に顔の表面、頬などに蜘蛛の巣状の血管が浮き上がり、掌が赤く染まり、やがて腹水が貯まって腹が膨れてくる。
 歩いても階段を上がっても息切れで、猛烈に苦しい。夜も眠れず、何もかも、やる気を失ってゆく。
 このレベルで、初めて、医者は「余命宣告」を行い「あなたの命は放置すれば1年持ちません」と告げて強制に近い入院となるのである。