スナック眞緒物語♯1(その6)
その話を受けて、文学少女の面目躍如たると愛萌が語りだす。
「そういえばフランスの女流作家サガンの『悲しみよこんにちは』でこんな場面があった」
遠くの席から先の酔っ払い客が叫ぶ。
「バッキャロー、サガンなんてモルヒネ中毒のジャンキーだったんだぞ」
無視して愛萌は話を続ける。
「父親との再婚が決まると、優しかったアンヌが主人公のセシルに突然厳しくなる。
『いま努力する理由はわからなくても、必ずあなたの将来の役に立つことがある』と勉強するのを特に強要する。
それはアンヌのセシルに対する深い愛情だというのが仄めかされているんだけど」
「愛萌、何で寝返るのよ!具体的には数学がどう必要になるの?」と美玖が不満そうに突っ込む。(続く)