青い薔薇の秘密(その5)
嵐の王は言った。
「森をめちゃめちゃにし、山を砕き、海を荒れ狂わせて、ありとあらゆる生命を根絶やしにせよ。さあ、行け」
嵐の王の言葉に活力を取り戻し、僕は荒れ狂ったように翼をはばたかせ、混乱と死を与える喜びに酔いした。
急激に生き物が育っていた東の窪んだ湿地に降り立ち、破壊を繰り返した。
もう少しで生命を滅ぼし尽くすのに成功すると思ったとき、今までに感じたことのない香りが僕の中にスーッと入ってきた。
それは僕が雲の頂に引き返していた間に新しく生まれた薔薇から漂う香だった。
瑞々しく繊細ではかない生き物である緑色の薔薇を見て、なぜか僕は恐れを抱いた。
混乱した僕が襲いかかろうとしたら、薔薇が言った。
「お願いです、殺さないで。どうか見逃して」
その言葉にたじろいでいるうち、薔薇の香りを胸いっぱいに吸い込んでしまって、瞬く間に怒りは陶酔に変わってしまった。
うっとりした心地になって、僕は穏やかな気分に包まれた。(続く)