スナック眞緒物語♯2(その5)
「こないだ大学の民俗学の授業で習った事なのですが」と前置きして愛萌が話す。
「うらじゃ祭が行われている岡山市では桃太郎のモデルというべき神話が伝えられています。
鬼の温羅(うら)は金棒や剣を手にし、人々を苦しめていました。
そこへ大和の国から、英雄吉備彦が家来を連れて、温羅を退治しました」
眞緒ママが口を挟む。
「ちょっと前にねるちゃんが出てたクイズ番組で、どこの県かを当てさせる問題の最初のほうのムズいヒントで『温羅』というのが出てきたわ」
「続けて、愛萌」と久美が言う。
「でも、真実は全く逆かもしれないというのです。
吉備彦は中央から使わされた征服者で、その地の指導者だった温羅を殺して、鬼に仕立て上げたのかもしれないというのです。
そして、その祭の地元民の少なからずは温羅の正義を今も信じているそうです」(続く)