>>178
急げばまだ被害者は署内にいるかも知れない。その一心で長濱は玄関ホールへ向かった。
そして、黒髪を後ろで束ねたスーツ姿の女性が玄関ホールのベンチに座っているを見つけた。
おそらく間違いないと踏んだ長濱は、思い切って話しかけてみた。

長濱「あの…失礼ですが、先ほどの殺人未遂事件の被害者の方ですか?」
友香「あ…はい…何か?…」

友香は事情聴取が終わった後、帰宅する前に少し気持ちを整えようとしていたのであった。
長濱は自分の名刺を出して身分を名乗り、切り出した。

長濱「あの…もし差し支えなければ、少しまたお話を聞かせていただけないでしょうか?」
友香「はい…あの、まだ取り調べの続きがあるんですか?」
長濱「取り調べということではありません。実は私たちもノギザカなんちゃらFAX事件に関心を持っているんです」
友香「…!」

社内でもほとんど相手にされていなかったこの件について警察の方が話を聞いてくれるということで、友香はその申し出を受けることにした。

2人は階段を登り、長い廊下を歩き、突き当たりにある鑑識課の部屋のひとつへ向かった。長濱がドアを開けると、中にあの米谷がいた。
実は長濱が上司を上手く言いくるめて、米谷を期間限定の非常勤職員として採用してもらっていたのである。

米谷「ずいぶん遅かったやん…あ、あれ?その方は?」
長濱「港南新聞の記者さん。あのFAX事件の取材を続けてる人なんだ」
友香「菅井といいます。はじめまして」
米谷「あ、はじめまして。米谷です。へぇ〜、ちゃんと調べてる記者さんもおったんやな」
長濱「ちょっと無理を言って来てもらったんだ。あ、どうぞ座ってください」
友香「あ、はい…」

こうして3人は互いの情報や考えについて話しはじめた。