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その日の帰り道、電車の中でも友香はずっと考えごとをしていた。

“ミンナヲ…トメテ”

あれはどういう意味だったのか。それとも何かの聞き違いだったのか。
車窓の夕暮れの景色をぼんやり眺めながら何とか頭の中をまとめようとしていた。

そして電車を降り、駅から少し歩き出したころ、不意に視線を感じた。

友香「(誰…?)」

友香が立ち止まり、周りを見回そうとした時、突然1人の女性が駆け寄ってきた。
長いストレートな黒髪に派手なパンクな服装、首筋にはサソリのタトゥーが見える。
女は素速い動きで友香の左脇に付くと肩をがっしりと抱いた。

友香「な、何を…」
石森「大人しくしてちょうだい。わかる?」

女は服の下から友香の脇腹に硬い筒状のものを押し当てた。

石森「わかる?悪いけど本物だから。妙な動きしないほうが身のためよ」

友香は一瞬の出来事に震えが止まらなくなってきた。命を狙われることなど生まれて初めての経験である。

石森「大丈夫?でも恐怖のあまりお漏らしってのはちょっと勘弁してね。この服も案外高いから(笑)」

女はニヤリと笑いながら囁いた。友香は冷や汗が止まらない。

石森「大丈夫よ。すぐに殺したりはしないわ。ていうか、これからある場所で何日か大人しくしててくれれば解放してあげる。変なことしなければね」
友香「…大人し…く?」
石森「いいから。あそこの黒い車まで歩くわよ。いい子でいなさいね」

友香は肩を抱かれたまま、女と一緒に歩き出した。