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あのFAXが送られてから3日目の午後、友香は都内の養護施設「青空マリーホーム」に来ていた。
友香は以前からこの施設での日常をレポートしながら障害者福祉の現在を検証するという連載記事を担当しており、この日はその月一の取材日であった。
FAXの一件もずっと追ってはいたものの、今日はこちらにとりあえず集中することにした。

理佐「あ、こんにちわ〜いらっしゃ〜い」ニコッ

玄関前のベンチに座っていた女性に声をかけられた。

友香「あ、渡邉先生こんにちわ〜。今日はよろしくお願いします」
理佐「みんなも取材を楽しみにしてましたよ」

彼女はこの施設の職員で、何度かの取材を通じて友香とはすっかり顔馴染みである。時にドスをきかせて入園者を叱るときもあるが、優しい美人先生として皆から慕われていた。

友香「いい天気ですね。お花もきれいで」
理佐「そうですね〜ね?リカさん、お花きれいですね?」
リカ「うん」

先生は隣に座っている少女に話しかけた。先生にひけをとらないくらいの美人なのだが、年齢不詳で謎めいた雰囲気がある。
友香が2人を写真に撮ろうとすると、少女はさっと視線を友香に向け、言った。

リカ「ん〜カメラ怖い〜」
友香「あ、怖かった?ごめんなさい」
理佐「大丈夫ですよ。これ言うとみんなが喜ぶから言ってるだけです(笑)」
リカ「へへへ」

少女はイタズラっぽく笑った。そして今描いていたスケッチブックを見せてくれた。

友香「あ、そこのお花の絵だ」
リカ「うん」
理佐「お絵描きが本当に好きなんですよ」
友香「あの…リカさんって、おいくつなんですか?」
リカ「バ〜カ」
理佐「年齢訊かれると怒るんですよ(笑)」
友香「す、すいません(汗」
理佐「でも、実際もう22歳になるんですよ」
友香「お若く見えますね…」
理佐「昔、すごく精神的なショックな出来事があったらしくて、それ以来精神的退行が戻らなくなってるそうなんですよ」
友香「その出来事って…?」
理佐「それだけはまだ話してくれないんですよ…」