>>134
上村「どうかされましたか?お嬢様」

ペリエの入ったグラスを持ったまま呆然とTVを見ている友香をいぶかしんで、メイドが尋ねた。

菅井「え?あ…うん、ちょっとぼーっとしちゃって。疲れたのかな」
上村「お忙しかったんですね」
菅井「新聞記者が暇な社会が本当はいいんだけど(笑)」
上村「それにしても、何か不思議なニュースですね。お嬢様の会社にもそのFAXは届いたんですか?」
菅井「え?ああ…私はほぼ1日外回り取材だったからよく知らないんだ」
上村「そうですか…」

その時、友香は咄嗟に嘘をついた。
社会部と芸能部のチャップ、もとい、キャップにこの件はまだ社内秘にするように口止めされていたからである。

実際には友香の勤める新聞社にも全く同じFAXが届き、社内は一時騒然となっていた。
ノギザカというのが地名なのかアイドルグループ名なのか、
センキョが占拠なのか選挙なのか船渠なのか、
様々な憶測がなされたが結論は出ず、文書を送りつけた動機もまた謎のままだった。

そして今のTVでの報道内容を見ても、それ以上の新たな展開はまだ無いようだ。

菅井「単なるイタズラだったりしてね(笑)」
上村「…そうだといいんですけど」
菅井「…!?」
上村「あ、長居してしまってすいません。また何かありましたらお呼びください」

そう言うとメイドは部屋を出て行った。
友香の中に芽生えたモヤモヤの正体は、この時はまだわからなかった。