その頃、母は仕事を辞めていました。
専業主婦になって、愛情不足できちんと目をかけてあげられなかった妹と弟を育てるんだと言っていました。
私のことは、「心配だけど反抗期もちゃんとあったんだから大丈夫」と言っていました。
 母は盆や正月に私をアパートから実家まで送迎すると言いながら、家にやって来ては泊っていきました。それ以外でも遊びに来ました。
親戚の相手をしなくて済むから楽なんだそうです。
農家だからと野菜を持ってくるはずだったのを、何度も忘れました。
お腹が空いたからと私が買っておいた食料を食べ、私のベッドで寝ていました。
愚痴を言うのは相変わらずです。
私が大学であった愚痴を話すと、聞いてはくれますが気付くと母の話になります。
 実家では猫を飼い始めました。
妹が拾って来て、人懐っこい様子から母も気に入ったらしいです。
基本は野良ですが、近所に隠れて餌をやっていました。段々懐いて、とうとう家の中で飼いだしました。
実家へ帰ると、元々動物関連の仕事に就きたいと言っていたんだから出来るだろうと、猫の爪切りをするよう頼まれました。
ネットで調べたやり方でやると家族は喜び、実家に帰るたびに私が猫の爪を切るようになりました。
 家族は猫を一員として迎え入れ、可愛がっています。
今も家族のラインは猫の話題で持ちきりです。
でも、私は猫を可愛いとは思うけれど、家族として迎え入れる気持ちにはなれませんでした。