その後、私は反抗期になりました。
覚えてはいませんが、母曰く食事を別に摂ったり顔を合わせようとしなかったりしたことがあったそうです。
私が唯一反抗期で覚えているのは、母の仕事が休みで家にいる時。
母と会いたくなくて、帰宅後に母がいる別宅ではなく祖父母の家に直行しました。
中学の自転車はいつものところへ置き、自分の靴は家の中に持ち込み、普段は開け放していて玄関から丸見えの座敷の襖を閉めて中に籠城しました。
祖母は私がいることを知っているし、祖父母の家に入って玄関からすぐの襖を開ければ、すぐに見つかります。
なんとなく、心配されたいと思っていました。母に自分を見つけてもらいたかったのだと思います。

 結局、母は私を探しには来ませんでした。
いい加減夕飯の時間にもなり、母の動向が気になった私は祖父母の家を出て別宅へ行きました。
たまたま畑から野菜を取りに行っていた母と庭先で出会うと、母は酷くあっさりしていました。
「いるならちゃんとただいまを言いに来なさい。もっと遅かったら警察に電話してたわ」
と、母は言っていました。

 母は私を探してはくれない。心配はしても、自分で探さずに警察に行ってすぐ大事にするんだ。
そう思うと、なんだか反抗心とでも言うのでしょうか。そういったものが、あっさり無くなりました。
何かを諦めたんだと思います。