イラク国民とは無縁の主権委譲儀式だったが、今後が思いやられる

■歓呼なし 6人の儀式
イラクへの主権移譲が電撃的に実施された。背景には、暫定政府と連合国暫定当局
(CPA)の大規模テロを何とかして回避したいという思惑がある。
前倒し計画は約一週間にわたって暫定政府側と米側が極秘で練り上げた。
しかし移譲式典は、悪化、混迷するイラク治安情勢をかえって際立たせることにな
った。
 主権移譲の前倒し実施が最初に伝えられたのは二十八日朝(バグダッド時間)。
各国メディアはCPAなどに取材攻勢をかけた。
 ところがその時、既に移譲式典が進行していた。会場は旧統治評議会の執務室で、
出席者はわずか六人。約一時間前に呼ばれ、会場に入って初めて式典だと知った報
道陣もごく少数。大々的に行われるはずの式典はわずか五分程度。青いケースに入
った公文書がイラク最高裁長官に手渡され、ぱらぱらと出席者の拍手が室内に響く
というあっけない儀式だった。