朝起きると、枕元に、息子からの書き置きが残されていたのだ。
会話が無くなって数年。
そこには「迷惑をかけてごめん、心を入れ替える」とだけ記されていた。
「急に部屋の掃除をし出して、伸びきった髪も坊主頭にして、
この非常事態でやっと、自分が置かれている現実に気がついてくれたのかもしれません。
私のためなのか、自分のためなのかなんてどうでもいいんです。
やっと息子がやる気を出してくれたから」
思えば「引きこもり」など、世の中が平和で、金のある親がいないとできない。
平和でなくなり、親にも金がなくなると、引きこもりは真っ先に死ぬしかない。
そういった危機感を、感じたのかもしれない。
「今、引きこもりを続けている人でも、親や家族が危機的状況になれば、
自分にできることは何か、嫌でも考える日が来ます。
誤解を恐れずにいうと、これ以上のきっかけはありません。
頑張りたいけど、普通の生活をしたいけどその資格は自分にはない、
という自己否定なんかやってる場合じゃないんですから」

新型コロナウイルスの影響で、世界中の人々たちが「生き方」や「常識」について考え直し始めている。
極端例かもしれないが、生きる力を取り戻す人々だっている。
コロナ禍後の世界は人間が決めるのだ。