■専門職の育成が課題
 公文書の保管・廃棄を適切に判断するためには、専門知識を持った職員が欠かせない。
香川県立文書館では公文書管理の研究を続けてきた専門職員が価値判断の中心となった。
一方、第二次世界大戦の関係文書約500冊を廃棄し、うち91冊が内規に反して廃棄
したことが発覚した千葉県文書館は、専門職員が異動で不在だった。
 専門職員の配置や育成などの対応は、各文書館で異なる。
 文書館を置く37都道府県に毎日新聞社が取材したところ、神奈川、広島など8都道県は、
大学院などで公文書管理を学んだり、日本アーカイブズ学会認定の「アーキビスト資格」
を取得したりした職員が常駐すると回答。大阪、香川などなど5府県は、大学で法制史を
学ぶなど「同等の知識がある職員が常駐している」とした。そうした職員がいない
文書館も、多くが国立文書館で研修を受けさせているが、山形、愛知、和歌山の3県は
研修を実施していなかった。
 西日本のある文書館職員は、「予算減で専門職員が雑務も担当することになり、
公文書管理に集中できない実態もある」と指摘。
大友一雄・国文学研究資料館教授は「行政機関は歴史的な意味合いを考えず、単に
『事務文書』と捉えがちだ。資料的価値を判断できる専門職の育成が進まない状態が
続けば、千葉や香川と同様の問題が繰り返されかねない」と警鐘を鳴らす。
 より客観的に保管・廃棄を判断しているのが熊本県だ。担当課などが廃棄対象とした
書類について、パブリックコメントや有識者への意見照会を実施し、最終的に専門家で
つくる第三者委員会がチェックする仕組みを導入。公文書管理条例が施行された
2012年度から15年度までに対象15万1490冊中2514冊を「政策決定過程の説明に役立つ
可能性がある」などとして廃棄を差し止めた。
 同権は文書館を設置していないが、残すべきだと判断した公文書は県庁などで
保管している。県政情報文書課は「将来必要となる公文書が廃棄される事態を
避けるため、万全を期している」としている。
【渡辺暢】