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毎日新聞 平成29年11月8日

■戦争資料が廃棄対象
香川県立文書館1万5000冊

 香川県立文書館(高松市)に保管される歴史文書約2万6000冊のうち、
軍歴など太平洋戦争関係の資料を含む約1万5000冊が、県条例に基づき
廃棄対象にされていることが分かった。
「将来的に評価が上がる可能性がある」と懸念した専門職員の機転で
保管を継続しているが、市民が閲覧できない状態になっている。
識者は「公文書を守るための条例なのに、専門知識のある職員が
残すべきだと考える歴史文書を残せないのはおかしい」と指摘する。
【渡辺暢、写真も】

■県条例で「重要といえず」
 香川県は公文書管理法施行(2011年)を受け、13年に県公文書管理条例を制定。
県の行政文書は保存期間(内容に応じ1年未満〜30年間)満了後、
「歴史資料として重要」と判断されたものは特定歴史公文書として文書館に移し、
それ以外は廃棄しなければならないと定めた。
 これを受け、書類を管理する県担当部署と同館は、14年度の条例施行までに
約1年かけ、過去に県から移管された約2万6000冊を点検。
このうち、軍歴関係書類や農地転用に関する書類などを含む約1万5000冊は、
「個人にかかわる内容などで『重要な政策決定の過程が記録されている』とはいえず、
特定歴史公文書には当たらない」と結論付け、廃棄対象と決めた。
 しかし、廃棄対象文書を改めて確認した同館の専門職員から「軽々しく破棄する
ことはできない」との意見が出たことから、「再審査中」の扱いで保管を継続している。
同館の嶋田典人・主任専門職員は「軍歴関係書類などは当事者にとって大切な資料。
長期的に見れば『石』が『玉』になる可能性もある」と説明する。
 日本アーカイブズ学会会長で、人間文化研究機構国文学研究資料館の
大友一雄教授(記録史料学)は「専門職の意見を生かす仕組みをつくり、保管すべきだと
判断したものは正式な保管文書として扱えるようにすべきだ」と話した。