A
数十メートル歩いたが、すぐには上がらずひとまず引き上げる。
初めての風俗を体験しようという割には、事前に思ったほど緊張せずに
見回ることができた。これなら行けるとの思いを持ちつつ、再び電車に乗り、
繁華街のあるターミナル駅にまで戻り、食事を摂る。
とんかつ屋で定食を食い、あまり飲めないが、緊張を和らげるつもりで
ビールを一本飲む。
食べ終わり、決心を固め、再びちょんの間街のある駅に向かう。
駅に降り、街に入り、ぶらぶらと歩いていく。
呼び込みのオバサンが何人も声をかけてくる。
女性の顔見せをやっているのだから、見て選べばいいのだろうが、
とてもじゃないが女性の方を見られない。
ちらちら店のほうに一瞬視線をやるだけで通り過ぎる。
迷ってもしょうがない。とにかくどこかに入ることだ。
入る直前になって、ここで性病の危険が頭をかすめる。
しかしゴムを着ければ、そうは危険は無いはずだと思い直す。
いよいよ自分のつまらない人生で、大きな区切りを迎えるんだなと自覚しつつ、
街の端から真ん中あたりにまで来たところで思い切って近くの店に飛び込む。
全くの適当に選んだ店。屋号は忘れた。数年後ネットをし始めた後、この
ちょんの間の地図を置いてあるHPを見つけたが、はっきり覚えておらず
特定できなかった。
店先に入ったものの、どうしていいかわからない。
オバサンが「いらっしゃい」と言う。店には三人の女性が座っていた。
普通は客が誰にするか選ぶのだろうが、何も言えずまごついていると
オバサンがその内の一人に合図して、その人が立ち上がる。
指名が無ければ、順番か何か決まっているのだろうか。
オバサンに促され、その女性と2階に上がっていく。
小さめの部屋に布団が敷いてある。暖房がちょうどいいくらいにしてあった。
オバサンに料金の説明を受ける。思ったより高かったので、一番短い30分
コースを選ぶ。値段は1万7、8千円くらいだったか。2万円はしなかったと思う。
自分が最初に触れる相手となる女性と向き合う。