■■今週の絶対お薦め本■■

★『音楽』『不道徳教育して講座』★━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

 三島由紀夫の『金閣寺』を読み終えた12歳の夏休みの感動をいまでも忘れえない。
 金閣寺は身近にあった。あの寺から、これほどの物語が紡がれるのかーー。

 三島由紀夫が割腹自殺したとき、私は中学1年だった。どこかの本に書いたけれども、友
人とともに「楯の会」に入会の申し込みをし、解散した旨の丁寧な毛筆の手紙を受け取った。

 三島由紀夫をどう見るか、はここでは問わない。天才とすることに異論もない。
 が、たとえばヘミングウェイの『海流の中の島々』と『ケニア』は、明らかに未完であり、
失敗作だ。川端康成の『古都』を私は奇跡の名作だと信じるが、ヤク中だなければあの作品
が生まれなかったのもまた確かなことだ。前年に連載された『眠れる美女』は、川端も認め
ているように疑いもなく駄作である。

 問題は、名を残した文豪は、すべての作品で天才だったのかーー否であろう。新しい試み
にトライし続ける作家たちは、たいてい文芸誌などに連載され、できあがってみたら、あれ
まあ、ということが数点くらい無いほうがどうかしている。

『音楽』を読んだとき、私は笑い転げてしまった。音楽とは、主人公の女性が実の兄と近親
相姦で得たオルガスムスのことだ。「兄」とのごは、誰とも感じない。つまり音楽が流れな
い、という話を女性誌に書いた。

 終盤まできて(私は1冊の本を読み終えなかったことは一度もない)、こんな箇所もあった。

《麗子のこの近親相姦的な愛情における、「兄の子を生みたい」という願望は、同時に、又、
その逆の作用。「兄自身を自分の母胎は迎え入れるために、その母胎を空けておく」という
願望を意味していることは、分析学的にわかりやすい論理的帰結である。》

 ちげーよ。分析学的にわかりやすい論理的帰結じゃねえよっ。『音楽』が、女性誌の読者
を舐めた失敗作であることは、分析学的にわかりやすい論理的帰結であるーー。

 他方、『不道徳教育論』は、不朽の名作だ。ただし小説ではなく、人生相談、ないし見事
なコラムの集積だ。
 三島由紀夫の多彩で非凡な才能を発露して余りがあるーー。

 とまあ、このような次第で3著を評してみた。5点満点でいうと(敢えてね)、『金閣寺』
5点、『音楽』1点、『不道徳教育講座』5点となろう。

■課題ーー『音楽』と『不道徳教育講座』は、おもしろかったですか?
 どちらか1冊でも構いません。

■締め切りーー2月28日24時