■■今週のコメント■■

★「読者感想文害悪説」異論★━━━━━━━━━━━━━━━━━━★

 子どもたちが「本嫌い」になる最大の理由は読者感想文を書かせるからだ、というエビデ
ンスなしの"定説"が蔓延しているに久しい。
 異論を聞いたことすらない。たいていの大人にとって、読者感想文は好きなものではない
らしい。

 だが、読者感想文の「せい」で本嫌いになったのか、本当に?
 本好きの大人は、日本にせいぜい150万人程度しかいない。大半は日常的に本など読ま
ないのだ。卒業、結婚、育児の3段階でキミたちは本を読む読まなくなっていくから気をつ
けよ、と大学の恩師に告げられた。いまや、大学生の過半が本を読まないから、出発点から
して「減りようがない」事態に陥っている日本という国ーー。
 このあたりが世界100位に入る名門大学群で、考える力を徹底して身につけさせる「議
論やレポート駆使」と、おとなしい日本の大学生の大きな違いとなっている。

 読者は、果たしてインプットだけなのか?
 ときには友や師と語り、まれにでもひとつの文章にアウトプットする必要はないのか?
 強制された読書が嫌だったのなら、その子を大人の教育で本好きにさせることなどでき
ない。強制を推薦に変えてみるがいい。
 私は小3で父に薦められて『ソクラテスの弁明』を読み、衝撃を受け、考え方の基本を学
び始める。小4で江戸川乱歩やエラリー・クイーンをクラスで回し読みし、小5の夏休み
に『誰(た)がために鐘は鳴る』や『シートン動物記』に(外での遊びのおまけ程度だった
としても)深く感銘した。
 読者感想文は、多くの生徒にしんどかったかもしれない。だが、暗記型の勉強はもっと嫌
だったはずだ、95%の子にとってはね。

 読者感想文が子どもから本を奪う、という説はどこにでも転がっているが、検証なんかさ
れていない。教師も親も生徒本人も、他人の(せい)にしたいだけなのだ。
 その結果、大学生の過半が「1年間に1冊も読まない」クレージーな事態を招いてしまった。

 読者感想文の否定という思考停止ではなく、もっともっとやれ、といいたい。もちろん工
夫して。教師が工夫しなくなったら、AIで教師は事足りる。18歳までの勉「強」には、適
度な強制や感情育成は不可欠なのだーー。
 すべての生徒を本好きにすることは不可能だが、アメリカやフランスやドイツやインド
などなどの多くの国々で、大学生や院生が書物と総合的に格闘することを通して、自在に、
また深く考えるパワーを大きく伸ばし、社畜となる旧時代を逸早く脱していることは厳然
たる事実なのだからーー。