2. はんだ
・鉛フリーはんだと鉛入りはんだが流通しているが,現在は組成やフラックスの改良により,鉛フリー+RMAフラックスでも一般用途では十分なはんだ付け性と信頼性が得られている
 特にFX-600を含む高性能な温調はんだこての場合は,設定温度以外に鉛フリーである事のデメリットを意識させられる事はあまり無い
・一般に使われるヤニ(フラックス)入りはんだには,フラックスの種類や量,ハロゲンの量などにより,MIL R,RMA,RAやJIS AA級、A級、B級 (それぞれ弱い=攻撃性が低い順) がある
 近年では鉛フリーはんだ+RMAフラックスでも十分なはんだ付け性があるので,腐食のリスクの少ないRMAの使用が推奨される
・用途と好みや慣れ次第ではあるが,表面実装を扱うならφ0.65mm以下が良く,電子部品にはφ0.6~0.8mm程度の物が,大型のターミナルなどにはφ0.8~1.2mm程度の物が良い
 細い方が一気に熱を奪われないため溶けが良いが,断面積(直径の2乗)に反比例してはんだの送りが忙しくなり,またグラム単価もかなり割高になる
・最初の1巻きはφ0.6~0.8mm程度の100~150g巻きがお勧め (\1000~2000) 大きめの端子なども扱うならφ0.6mmと割安なφ1.0mmの2巻きを揃えても良い
!鉛入りはんだと鉛フリーはんだの両方を使う場合はこて先を分ける必要がある(コンタミによる鉛フリーはんだ接合強度低下の防止)!
*お勧め
・鉛入り: 日本アルミット KR-19RMA,千住金属 スパークルハンダ など
・鉛フリー: 日本スペリア SN100C,千住金属 スパークルESC など

鉛入りはんだのデメリット
・機械的性質(引張強さなどが弱い)
・電気的性質(高抵抗)
・毒性/環境負荷(特にペットを室内飼いしてる方)
・現在流通する製品は基本的に鉛フリーはんだが使われており,手を加える際はコンタミを避けるため元のはんだを取り除く必要がある (上からちょい付けは出来ない)
 Sn主体の合金に微量の鉛が混入すると鉛がリードやランドに偏析し,接合強度が大幅に低下する
 また鉛入りはんだ中においてもPbリッチ層が形成されており,これが鉛入りはんだの接合強度を下げている

鉛フリーはんだのデメリット
・超低温下での信頼性及び極度な高信頼性が求められる航空宇宙軍事産業などでの信頼性,耐衝撃性
・鉛フリーはんだの価格
・高い融点と相まって,錫喰い (鉛フリーはんだの組成の大部分を占める錫に鉄や銅が溶出する) によるこて先などのラニングコストの上昇,粗悪な基板のパターン喰われ
・高い融点により過熱のリスクが大きく,多層基板などのリワークもし難い
・表面張力が強く,濡れ広がりに劣る
 消費量の少ないホビイストの場合に問題になるのは主に過熱とリワークで,価格やラニングコストはそこまで問題にならない


3. こて先
*潰しの効く形状を選ぶも良し,用途に合わせて変えるも良し
・細く長く鋭いこて先の出番は初心者が思うよりもずっと少ない
・太く短く接触面積が大きいこて先は,細く長く接触面積が小さいこて先よりも熱の入りが遥かに良い
・C型(円柱斜めカット)/BC型(円錐斜めカット)/D型(マイナスドライバ状)といった面を使える形状は,接触面積を取りやすく熱の入りが良い
・CF型/BCF型はカット面のみにはんだが乗る(鉄メッキが露出している)ためブリッジを起こしにくい反面,カット面と側面の両方を使た予熱はし難い
!鉛入りはんだと鉛フリーはんだの両方を使う場合はこて先やクリーナーを分ける必要がある(コンタミによる鉛フリーはんだ接合強度低下の防止)!

・熱伝導と蓄熱に優れる銅のコアに耐蝕メッキとして200~500μm程度の鉄メッキを施し,更にはんだが乗るエリアを限定するため先端以外にクロムメッキを施した構造
 鉄メッキが厚いと熱の入りが悪く,鉄メッキが薄いと寿命が短くなるが,ホビイストならあえて長寿命型を選ばなくても,管理が良ければそれなりに保つ
  メッキ厚のコントロールが悪いと厚い場所は熱が入りにくく,薄い場所はホットスポットになり侵蝕される
  安価な中華製コンパチこて先にはコントロールが悪い物や極端に鉄メッキが厚い物があるようで,お勧めはしない
*HAKKO T18系と旧型の900M系,goot PX-60RT系,HOZAN HS-131~145は相互に互換性があり,HOZAN HS-131~145はHAKKO T18相当のOEMなので,概して安価なT18を買うと良い
 900M/PX-60RT系の形状は近く,同じ呼びサイズでもT18と比較し細身な傾向があるため,狭所作業に向く反面熱の入りは悪く,こて先温度も低めに出る
 また,HAKKOと比較しgootのこて先は概して鉄メッキが厚い傾向があり,長寿命な反面熱の入りに劣る
 そのため熱の入りを期待出来ない細く長く鋭いこて先は,可能な範囲でT18から選ぶと良い